
コーラ500mlに入っている砂糖は、およそ60g。
スティックシュガーなら、20本ぶんになる。
20本を机に並べて、それを飲んでいる。
飲んでも、その日は何も起きない。痛くならないし、体調も変わらない。だから明日もまた買う。
砂糖が厄介なのは、ここになる。支払いが、その場で来ない。
目次
溶けきらなくなる
甘い飲み物に入っている果糖は、肝臓でこわされる。
この反応にはブレーキがない。こわすほど細胞のエネルギーが減り、その穴埋めに体は別のものを分解しはじめる。そうしてできるのが、尿酸になる。
尿酸は、血に溶けている。ただ、溶ける量には上限がある。
コップの水に砂糖を入れつづけると、あるところから溶けきらなくなって、底に溜まる。
同じことが、関節で起きる。
溶けきれなかった尿酸は、針のかたちの結晶になって、関節の中に沈んでいく。
4人に1人は、もう沈みはじめている
日本人男性2万5千人を調べた研究では、尿酸値が基準を超えている人の割合はこうなる。
| 年代 | 男性 |
|---|---|
| 30代 | 25.1% |
| 40代 | 27.1% |
30代で、すでに4人に1人。
いっぽう、発作がいちばん多いのは60代以降になる。
つまり、いま何も起きていないのは、まだ順番が来ていないだけだ。
沈殿は、痛みを出さずに進む。底に溜まっていくあいだ、水面はいつもと同じに見えている。
積もったものが、ある夜に暴れる

限界を超えると、発作が来る。
国際的な診断の基準には、そのときの体の状態が、そのまま項目として並んでいる。
- 痛みが最大になるまで、24時間もかからない
- 関節が 赤くなる
- さわれない。押さえられない
- 歩くのがひどく難しくなるか、その関節が使えなくなる
いちばん多く狙われるのは、足の親指のつけ根になる。
日本のガイドラインは、放っておいた場合をこう書く。最初の3日は痛みの強さが変わらない。7日たっても、大半で続いている。
何年もかけて溜めたものの請求書が、ある夜、まとめて届く。
ビール1杯と、ほぼ同じだった
痛風は酒と肉の病気、というイメージがある。
同じ人たちを同じ12年間追いかけたアメリカの調査で、1日1杯あたりのリスクを並べるとこうなる。
| 1日1杯 | リスク |
|---|---|
| ビール | 1.49倍 |
| 甘い炭酸飲料 | 1.45倍 |
| 蒸留酒 | 1.15倍 |
| ワイン | 1.04倍 |
甘い炭酸飲料は、ビールとほとんど変わらない。蒸留酒とワインは、その下に来る。
ダイエット飲料では、リスクは上がっていない。砂糖の側で起きている。
酒を控えている自分を、健康なほうだと思っていたかもしれない。その隣で、同じものを毎日1本飲んでいた。
削られるのは、寿命じゃない

砂糖の話は、たいてい寿命や病気の話で終わる。
だが実際に削られるのは、もっと手前にあるものになる。
歯。 40代前半で、虫歯を経験した人は97.2%。しかも、治さないまま抱えている人は男のほうが多い(男33.2%/女24.3%)。笑ったときに、いちばん先に見える場所だ。
歩き方。 発作が来れば、靴が履けない。数日は引きずって歩くことになる。
どちらも、人が最初に見るところになる。
砂糖が奪うのは、遠い未来の寿命じゃない。今の見た目と、動ける体のほうだった。
魅力は、何を足したかでは決まらない。何を溜めなかったかで決まる。
請求は、止められる
アメリカの研究で、男子40人を2つに分けた。片方は8週間、砂糖を減らす。
肝臓の脂肪は 25%から17%へ下がった。もう片方は、ほとんど動いていない。
正常の範囲まで戻ったわけではない。それでも、溜まる側から減る側へ、向きは変わっている。
入れる量を減らせば、水面は下がりはじめる。
今日、1つだけ

ここまでの数字は、ほとんどが「1日1杯」を単位にしている。
だから、甘い飲み物を1本、水に変える。
やめなくていい。減らさなくてもいい。いちばん惰性で買っている1本だけを、入れ替える。
そして翌朝、歩く。
この記事の抜け殻指数は、出せない
抜け殻指数は、依存が1日からうばう時間の割合だった。
砂糖は、時間をうばわない。飲む行為そのものは、数分で終わる。
指数には、乗らない。
乗らないまま、関節の底に積もっていく。積もっているあいだ、痛みは出ない。出たときには、もう積もっている。
数えられないものは、放置される。
だから、1本だけは数えられるようにしておく。
あなたは弱いのではない。1日を、設計されていないだけだ。
抜け殻とは、人のことじゃない。1日が空になっている状態のことだ。
状態は、もどせる。