総務省の調査によると、20代男性が平日にインターネットを使う時間は、平均で 274.5分。
1日あたり、4時間35分。
10年つづけると、まる2年ぶんになる。
失った2年は、返ってこない。
なぜ、これだけは気づけないのか
酒には二日酔いという警告がある。タバコは、社会が「やめるべきもの」としてあつかう。
スマホには、どちらもない。全員が同じ状態だからだ。
くらべる相手が全員同じなら、その状態は異常だと気づけない。仕事の連絡も地図もそこにある。切りはなせない部分と、依存している部分の区別がつかない。
判定する基準が、社会の側から消えている。
睡眠がけずられている
厚生労働省の調査による、日本人男性の睡眠。
| 睡眠時間が6時間未満 | 38.5% |
| 30〜50代にかぎると | 4割をこえる |
| 睡眠で休めていると答えた人 | 74.9%(減りつづけている) |
この調査はスマホの利用を測っていない。日本の公的な統計に、ふたつを結びつけたデータはない。
「通知1回で23分」は、存在しない数字だ
集中の話でよく引かれる数字がある。「通知が1回来ると、集中がもどるまでに23分かかる」。
原典は存在しない。
引用元とされるカリフォルニア大学アーバイン校の2008年の実験に、23分という数字はない。結果はむしろ逆だった。
じゃまが入らなかったとき、作業にかかった時間は22.8分。 じゃまが入ったときは、20.3分。
じゃまされたほうが、速く終わっている。
そのつけは、別のところに出ていた。同じ実験で、じゃまされた人のストレスは6.9から9.5に上がっている。いらだちも、負担の感じ方も増えていた。
じゃまされた人は、遅くなったのではない。同じ仕事を、より短い時間に、より高い負荷で押しこんでいた。
けずられているのは時間ではない。余白だ。
余白がない人間から、順に壊れていく。
もどる側の数字
イギリスのバース大学がおこなった実験では、154人を2つに分け、片方だけSNSを1週間休ませた。
休んだほうは、気分のよさが上がり、落ちこみと不安が下がった。
1週間で、はっきり差が出る。
10件の研究をまとめた2025年の報告(あわせて1,491人)は、やり方のちがいを分けて調べていた。
- 利用を減らす → 効果あり
- 完全にやめる → 効果は確認できていない
効果そのものは大きくない。海外の研究が中心で、日本人男性のデータでもない。それでも方向として確かめられているのは、やめることではなく、減らすことだ。
情報が使いつぶすものは、はっきりしている。受け手の注意だ。情報がゆたかになれば、注意は貧しくなる。
── ハーバート・サイモン(1978年ノーベル経済学賞)/1971年
サイモンがこれを書いたのは、スマートフォンが存在しない1971年だ。
今日、1つだけ
厚生労働省の睡眠ガイドには、こう書かれている。
寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠に寄与します
寝る前の部屋に、スマホを置かない。
置き場所を変えるだけで、1日でいちばん影響の大きい寝る前の2時間から、光が抜ける。
5つ変えて3日でやめるより、1つ変えて2年つづけるほうが、データに沿っている。
この記事の抜け殻指数は「28.6」
抜け殻指数は、依存が1日からうばう時間の割合を出したものだ。起きている16時間のうち、どれだけがその行為に使われているか。
274.5分 ÷ 960分 × 100 = 28.6
起きている時間の、3割ちかく。
20代男性の平均で、パソコンやタブレットもふくむ。スマホだけの数字ではない。
充電器を、寝室の外に出す。
翌朝、いつもより早く目がさめたら、その時間で歩けばいい。
あなたは弱いのではない。1日を、設計されていないだけだ。
抜け殻とは、人のことじゃない。1日が空になっている状態のことだ。
状態は、もどせる。ただし、気づいた分だけ早く動いた者から。