
いま、だれかの投稿を見て、ちょっと落ちた?
同い年のやつの、新しい車。
知らない男の、割れた腹筋。
友だちの、海外旅行。
もしそうなら、先にひとつだけ言わせて。
それ、あなたが弱いからじゃない。
比べるほど儲かるように、点数が設計されてる。
しかも作った会社は、それを自分で測ってた。
これは、全員が星をつけ合う世界の映画だ。
序幕 4.2の朝

Netflixのドラマ『ブラック・ミラー』に、「ランク社会」っていう回がある。
2016年の作品だ。
その世界では、全員が全員を、5つ星で採点してる。
コーヒーを買えば、店員に星。
エレベーターで会えば、ご近所に星。
星の平均が、その人の「点数」になる。
点数で、住める家も、乗れる飛行機も、受けられる治療も決まる。
主人公のレイシーは、4.2。
悪くない。でも、上でもない。
狙ってる高級マンションがあって、4.5になれば家賃が2割引きになる。
4.2 → 4.5
だから、鏡の前で笑い方の練習までする。
すれ違う人みんなに、とびきりの愛想。
それでも、点数はぜんぜん上がらない。
2016年には、ブラックジョークだった。いまは、スマホの中身そのものだ。
2019年10月。
Instagramの社内で、ある資料が回った。
題は「10代のメンタルヘルス 深掘り調査」。
2021年の内部告発で表に出て、いまはMeta(Instagramの親会社)が自分のサイトで公開してる。
その4枚目に、こうある。
「Instagramでの害は、大きく3つに分かれる。社会的比較、社会的なプレッシャー、そして他人との嫌なやりとり。」
— Instagram の社内資料「Teen Mental Health Deep Dive」(2019年10月)。Meta が2021年に公開
1つ目が、「比較」。
30枚目の題は、もっとストレートだ。
「社会的比較は、負のループを作る」。
比べる。自分を疑う。その気持ちばっかり見ちゃう。落ちる。
落ちてるときほど、画面の中身に引っぱられる。
で、また比べる。
ぐるぐる回る仕組みを、作った側がいちばんわかってた。
フェアに書いとく。
Metaは公開するとき、「この調査のやり方では、ここまでの因果関係は言えない」って注釈をつけてる。
でも、少なくとも、会社が「比較」を害の1つ目に書いてたのはほんとだ。
この章の敵は、SNSを見てる人じゃない。
キラキラした投稿をしてる人でもない。
比べるほど儲かるように、点数を設計したやつらだ。
第一幕 人生、星いくつ?

ドラマのレイシーは、点数を上げたくて、プロのコンサルタントに相談する。
言われたのは、こう。
「理想は、質の高い人たちからの高評価。つまり、4点台後半の人たち」
で、帰りぎわに、もう一言。
「がんばりすぎちゃダメ。そういうのは尊敬されない。4点台後半の人は、すぐかぎつける。自然体で。本物っぽい仕草、それがカギ。」
— ドラマ『ブラック・ミラー』「ランク社会」(2016年)の字幕より、点数コンサルタントの台詞
「自然体」まで、点数を上げる手口になってる。
ドラマだから、笑える。
でも現実の点数表は、もっと身もふたもなかった。
Facebookには、社内で使ってた点数表がある。
2018年、「友だちや家族との、意味のあるやりとりを増やす」って名目で、投稿の並べ方を変えた。そのときのもの。
いいね、1点。
ハートやハハなどの絵文字の反応、5点。
しっかりしたコメントやシェア、30点。
点数の高い投稿ほど、たくさんの人のフィードに出る。
表向きの理由は「幸せなやりとり」。
でも社内の資料には、もうひとつの理由も書いてあった。利用者が、だんだんFacebookでやりとりしなくなってた。
幸せのためっていうより、離れていく客を引き止めるためだった。
ここで、さっきの「5点」をもう1回見てほしい。
絵文字の反応には、「ひどい(怒り)」も入ってる。
2017年から、怒りの絵文字も、いいねの5倍で数えられてた。
社内では、心配する声も出てた。
「炎上しそうな投稿をひいきすると、スパムや釣りへの扉をうっかり開けるかも」
同僚の返事は、「ありうるね」。
社内のデータ科学者たちは、シェアされた投稿の中に、誤情報や攻撃的な中身がやたら多いことも書き残してる。
怒らせるほど、点数が上がる。点数が上がるほど、広がる。
怒りの重さは、2018年に4倍へ。
2020年9月、やっと0になった。
で、ここがこの章のポイント。
0にしたら、誤情報やショッキングな投稿は減った。
そして、利用は減らなかった。
直しても、
困らなかった。
この話、第四幕でもう1回出てくる。
元Facebook社員で内部告発者のフランシス・ホーゲンは、2021年、アメリカ議会でこう話した。
「小さなごほうびの仕組みがあると、人はもっと投稿する。そうすると私たちはもっと投稿を見て、もっと広告を見る。それが、彼らをもっと儲けさせる。」
— フランシス・ホーゲン(元 Facebook 社員)、米上院の公聴会(2021年10月5日)
いいねは、ごほうび。
ごほうびが欲しくて、投稿する。
投稿を見に来た人の目に、広告が入る。
タダのSNSでは、
あなたが
商品
— YouTube コメント(高評価 1,400)/92NYのコメント欄
いいねボタンを作ったチームのひとり、リア・パールマン。
2018年、BBCの取材でこう話してる。
いつのまにか、自分の価値を、いいねの数で測るようになってた、と。
「承認が欲しいとき、Facebookを見に行く。……急に思った。あれ、私もフィードバック中毒なのかもって。」
— リア・パールマン(Facebook の「いいね」ボタンの共同発明者)、BBC(2018年)
作った本人でさえ、こうなる。
あなたの意志が弱いんじゃない。そう効くように、できてる。
しかも、点数のゲームには全員が参加させられてる。
久里浜医療センターの全国調査(2025年)だと、SNSで「他人の投稿に高評価をつけた」人は30.3%。男性は25.0%。
テクノロジーも、SNSも、アルゴリズムも、こうやって効くように設計されてる。ずっと消費してたら、なにかが足りないって感じるスキもない。“フィード”(エサ)って呼ばれてるのには、ワケがある。
— YouTube コメント(高評価 136)/The Diary Of A CEOのコメント欄
星をつけられる側で、星をつける側。
全員が、点数のゲームに参加させられてる。
ここで一回、休憩。いいねの数が気になって、なにを投稿するかで手が止まる。そこで止まってる人のために、男としての土台から組み直す教材がある。続きはここで待ってる。
第二幕 男も、比べてる

ドラマのレイシーには、弟がいる。ライアン。
同じ部屋に住んでて、だいたいヘッドセットでゲームしてる。
姉の点数稼ぎを、弟は冷めた目で見てる。
「その高級マンション、作り笑いの牢屋だよ」
「この点数のやつ、ぜんぶさ。幸せなふりしてるだけの人たちと、自分を比べて……」
レイシーは、言い返す。
あんただって、
ゲーム仲間から
ポイントもらってるでしょ。
同じことよ。
ここ、男の話として、ガチで刺さる。
姉は、星。弟は、ゲームのポイント。
追いかけてる点数がちがうだけで、やってることは同じ。
さっきのInstagramの社内資料。32枚目の題は、これ。
「男子も女子も、同じくらいの頻度で他人と自分を比べている。ただし、比べる話題がちがう。」
— Instagram の社内資料「Teen Mental Health Deep Dive」(2019年10月)32枚目の題
女子は、体型の話が多い。
男子は、体型の言葉をあまり使わない。
かわりに出てくるのは、「ちゃんとした服」と、「まわりに合わせて物を買えるだけの金」。
社内の聞き取りで、イギリスの男子はこう言ってた。
「比べると、自信がなくなる。探索タブに出てくる、体を鍛えた男たち。……」
「結局、何百万ポンドも持ってる、ぜんぜん手の届かない人たちと比べちゃう」
アメリカの男子は、こう。
「みんな何百ドルもする服を着てる。……がんばって一番いい格好をしようとするけど、そんな金、だれが持ってるんだよ」
筋肉と、金と、服。男の比較は、ちゃんとそこにある。
フェアに書いとく。
この声は、イヤな経験がある人を選んで集めた、40人の聞き取りから出たもの。男子みんなの声じゃない。
数字もある。アメリカの男子の14%が「Instagramで、自分のことが前より悪く思えるようになった」と答えた。
でも同じ図で、50%は「良くなった」と答えてる。Metaは、反論でそっちを強調した。
どっちもほんと。
ただ、会社は、男子が落ちる分まで、ちゃんと数えてた。
オーストラリアに、18〜30歳の男性300人を、くじで3つに分けた実験がある。
見せたのは、同じ男性インフルエンサーたちの写真。
服を着た写真。上半身裸で筋肉を見せた写真。それと、風景の写真。
体への満足度が下がったのは、裸の筋肉を見たグループだけ。
服の写真と風景は、ほとんど変わらなかった。
別の実験では、男性223人が7日間、自分のスマホで、ランダムに画像を見た。
筋トレ系の写真を見たあとは、体への不満が増えた。
いちばん効いたのは、もともと自分の筋肉に不満があって、人と見た目を比べがちな男。
もう落ちてるやつほど、もっと落ちる。そういう向きに効く。
どっちも、見た直後の気分の話。長い目でどうなるかまでは測ってない。
アメリカとカナダの男子・男性1,553人の調査もある。
筋肉、プロテインやサプリ、筋肉増強の薬。そういう投稿をよく見る人ほど、「筋肉が足りない」と思いこむ状態(筋肉醜形)の疑いが強かった。
しかも、SNSを使ってる時間の長さとは関係なく。
何時間見たかより、なにを見せられてるか。
どっちが先かはまだわからない、と研究者自身が書いてる。そこは言い切らない。
服、金、筋肉。
その次に来るのが、いちばん逃げ場のないやつ。顔だ。
ちょっと正直に答えてほしい。
インカメで、自分の横顔をこっそりチェックしたことある?
「垢抜け」「清潔感」で、検索したことは?
AIの顔診断で、自分の顔に点数をつけたことは?
1個でも当てはまるなら、あなたもう、レイシーと同じゲームの中にいる。
星のかわりに、顔の点数。
気づいたら、けっこうな数の男が、このゲームに取りこまれてる。
日本の13〜29歳の半分以上(54.0%)が、「容姿のこと」を心配してる。こども家庭庁の2023年の調査だ(男女をまとめた数字)。
イギリスでは2026年、男子と見た目の執着を調べた報告書が出た。
男子たちは、検索しなくても、その手の投稿がフィードに流れてくるって話してた。
16歳の男子は、こう言ってる。「みんな、しょっちゅう自分の顔を載せて、採点してくれって頼んでる」。
海外では、これに名前がついてる。
looksmaxxing(ルックスマックス)。見た目を、限界まで最大化する、っていうネットのスラング。
顔の点数のつけ方は、もともとネットの掲示板で、男どうしが顔を採点しあってたところから来てる。
それを、アプリが自動にした。
研究者がTikTokを調べたら、そういうアプリが十数本見つかった。中身は、ほぼ同じ。
自撮りを1枚あげる。
AIが、あごの角度だの、なんとか比率だのを測る。
点数とランクが出て、「あなたの伸びしろ」まで出る。
その先を見るには、週ごとのサブスク。
人気のアプリのひとつ、Umax。App Storeの説明には、こう書いてある。
「分析結果を見るにはサブスクリプションが必要。追加の採点には追加の購入が必要」
課金メニューには、「10点満点になった自分」の画像。6.99ドル。
Google Playだけで、1,000万回以上ダウンロードされてる。
点数をつけて、
上げ方を売る。
ドラマの点数コンサルと、まったく同じ商売だ。
オーストラリアの研究者は、利用者が共有した画面をいくつも調べて、こう見てる。
「まず、わりと否定的な評価が出る。アプリには、改善の余地が十分に要るから。だってサブスクでしょ? 課金を続けさせたいわけ。」
— クリストファー・デイヴィッド(ドイツ・ノイウルム応用科学大学の研究者)、オーストラリアの ABC News(2026年10月)
これは研究者の見立てで、会社が「わざと低くつけてる」っていう証拠があるわけじゃない。そこはフェアに書いとく。
でも、その記事を書いた記者の一文は、仕組みそのものだった。
欠点がたくさん見つかるほど、売れる解決策もたくさんになる。
もうひとつ、フェアに。
見た目を気にすること自体は、悪くない。
イギリスの研究者は、「ルックスマックスには幅がある」って言ってる。健康に気をつかって、体を鍛える。そこには、いい面もある。
問題は、それが「たったひとつのこと」になって、健康を賭けてまで見た目をいじりはじめたとき。
じっさい、あごのラインを変えるとうたうSNSの流行りのやり方に、アメリカの矯正歯科の学会が「科学的な裏づけがない」と警告を出してる。
日本だと、もっと身近な形で流れてくる。
このサイトで2026年10月にTikTokを調べたとき、男向けの「悪習慣」「非モテ脱却」のタグで、こんな投稿が回ってた。
「これが10点以上ある男子、多分手遅れです。」
並んでるのは、肌のテカリ、ニキビ、化粧水を使ってない、みたいなチェックリスト。
で、最後はこう終わる。
「プロフィールのリンクからおすすめのスキンケア」
別の投稿は、買うまでの道順まで書いてた。
【プロフィール】→【紹介リンク】→【商品を確認】→【購入】
これで、47万回再生。
一字一句同じ説明文の投稿を、2つのアカウントが10本も出してた。
「知らないうちに損してる非モテ習慣。あなたは大丈夫?」
同じ文を、74秒差で投稿した日まである。10本あわせて、132万回。
広告費が払われてるのかは、外からはわからない。
でも、あなたの顔の点数表が、だれかの売り場の入口になってるのはほんとだ。
「手遅れ」って言葉、ちょっと覚えといて。
国民生活センターの資料に、30代の男性の例がある。
薄毛の治療のクリニックで「もう少し進行すると手遅れになり治療できない」と言われて、約200万円の契約をした。
20代の男性の例もある。
「全身脱毛が5回で15万円」の広告を見て行ったら、「本日の契約なら」で約90万円。3年の分割払い。
10〜20代の男性の脱毛エステの相談は、2018年度の87件から、2021年度は541件。
平均の契約額は、男性が約52万円。女性の約34万円より高かった。
「手遅れ」で、
不安を作る。
「今日なら」で、
売る。
「清潔感」も、同じ型に乗ってる。
ABEMA Primeの「【ひげ】清潔感って必要?髪型や服装も?人は見た目で判断する?」って回で、美容ジャーナリストが話してた。
清潔と清潔感は、「実はあの全く別物」。清潔感は「あくまでこう他人から見た印象」だって。
清潔は、自分で決められる。
清潔感は、他人が採点する。
他人が採点する言葉は、いくらでも売り物にできる。
コンプレックス作るビジネスは信用出来んのよなぁ
— YouTube コメント(高評価 375)/ABEMA Primeのコメント欄
フェアに書いとく。
肌のケアも、脱毛も、悪くない。
ABEMA Primeの脱毛の回には、ヒゲを剃るたびに血が出てたのが、医療脱毛で救われたってコメントもあった。
やりたい男は、やればいい。
問題は、手入れそのものじゃない。
先に「手遅れ」の不安を作って、点数で追いこんで、その先に売り場を置く仕組みだ。
整形みたいに顔を変えるカメラのフィルターの話は、第四幕でもう1回出てくる。
アメリカの社会心理学者、ジョナサン・ハイト。
2026年に日本語版が出た『不安の世代』で、こう整理してる。
女子は、SNSの比較で傷つく。
男子は、現実の世界から押し出されて、ゲームやネットの世界に引きこまれていく。
男の子たちが、危ない。その多くが、現実の世界から降りてしまった。有能で、うまくやれて、人を愛せる男になるための力は、そこでこそ身につくのに。かわりに、どんどん魅力を増す仮想の世界へ誘いこまれている。そこでは冒険への欲も、性への欲も、少なくとも表面上は満たされる。仕事でも、恋愛でも、結婚でも、あとで役に立つことを何ひとつしなくても。
— ジョナサン・ハイト(2023年のエッセイ)。著書『不安の世代』
ハイト本人も、男子の章は「より推測的な話」って書いてる。
学者からの反論も多い(第五幕で書く)。だから、言い切りはしない。
でも、日本の数字は、この整理とけっこう合ってる。
久里浜医療センターの全国調査(2025年1〜2月)。
10〜29歳で「ゲーム行動症」の疑いがあったのは、男性14.6%、女性5.8%。
SNSの使いすぎの疑いは、同じ年代で男女とも5.8%。差がない。
男女で差が出るのは、SNSじゃなくて、ゲームのほう。
レイシーの弟と、同じだ。
男の点数は、星からランクに移っただけかもしれない。
ただ、ここもフェアに書いとく。
ゲームをする男が、悪いわけじゃない。
WHOは2019年、病気の国際的な分類に「ゲーム行動症」を入れた。
でも同じWHOが、なるのは「ゲームをする人の、ごく一部」とも書いてる。
線引きは、時間の長さじゃない。WHOがあげてるのは、この3つだ。
自分で止められない。
ほかの用事や人より、ゲームが先にくる。
まずいことが起きても、続けてしまう。
それが1年くらい続いて、生活が回らなくなったとき。
何時間やったかじゃない。決めた時間に、自分で止められるか。
久里浜医療センターが2019年にやった別の全国調査もある。
1日1時間もやらない人でも、約半分が「思ってたより、つい長くなった」と答えてる。
短くても、止まりにくい。長くても、平気な人もいる。
昔は趣味だらけだった。木工、筋トレ、庭いじり、車いじり。いまは、スマホ見てるだけ。今日から変える。
— YouTube コメント(高評価 160)/AsapSCIENCEのコメント欄
第三幕 穴は、掘られてる

ドラマで、レイシーの点数は、ちょっとしたことで崩れはじめる。
朝から小さなトラブルが続いて、知らない人に低い星をつけられる。
4.2を切って、4.183。
空港で、乗るはずの便が欠航。
振替は「4.2以上の方のみ」。
キレた瞬間、警備員に罰をくらう。「ダブルダメージ」。24時間、まるまる1点マイナス。
落ちはじめた人のために、落ちる仕組みが待ってる。
2020年3月、Instagramの社内サイトに、10代の女子の体型と比較についての調査が上がった。
その要約に、こうある。
「Instagramでの比較は、ほかよりひどい。……探索タブと、他人のプロフィールののぞき見が、終わりのない“うさぎの穴”を生む。」
— Instagram の社内調査「10代女子の体型と社会的比較」(2020年3月)。WSJ が2021年に公開
うさぎの穴。アリスが落ちてく、あれ。
探索タブは、あなたがフォローしてない人の投稿を、会社が選んで並べる場所だ。
アメリカの州が裁判所に出した訴状には、2021年の社内の論文が引かれてる。
推薦で「見た目で比べさせる投稿」を多く浴びる状態に入ると、次の週、10代の女子はその手の投稿を14.9%多く見た。
男子も、13.1%多く見た。
穴を掘ってるのは、あなたの親指じゃない。
2020年4月の社内研究には、仕組みそのものが書いてある(これも訴状より)。
投稿の並べ方は、反応の多い投稿を上に出しがち。
だから、あなたが見るのは、友だちの「いちばんウケた投稿」ばっかりになる。
それと自分の投稿の反応を比べたら、友だちがじっさいより人気者に見えて、自分が下に感じる。
しかも社内の数字だと、自分の投稿につくいいねは、Instagramで見てる他人の投稿のいいねの、だいたい5%。
あなたのいいねは、
見てる投稿の
20分の1。
勝てない比べっこを、毎日、自動で組まれてる。
社内の別の資料には、こんな言葉もあった。
「若い人は、Instagramを人気コンテストだと受けとってる」
「社会的プレッシャーは、Instagramの体験そのものに組みこまれてる」
で、Instagramのトップ、アダム・モセリ。
社内のメールに、こう書いてる。
社会的比較は、
Instagramが向き合う
存亡の問いだ
“I see social comparison as the existential question Instagram faces”
— Instagram の責任者アダム・モセリの社内メール(米国の州司法長官による訴状より)
存亡。つまり、会社があるかないかの問題。
比較は、たまたま出たおまけの副作用じゃなかった。
Instagramのど真ん中の問題だって、トップがわかってた。
無限スクロールを設計したエイザ・ラスキンは、2018年、BBCにこう言ってる。
「スマホの画面の裏には、だいたい文字どおり千人のエンジニアがいて、これを最大限やめられなくしようとしてる。」
— エイザ・ラスキン(無限スクロールの設計者)、BBC(2018年)
千人 vs あなたひとり。
意志で勝てって言うほうが、ムリゲーだ。
日本では、「映え疲れ」って言葉まで出てきた。
ABEMA Primeに「【BeReal】映え疲れの反動?承認欲求に変化?素を見せるSNSなぜ人気?」って回がある。
出演者は「インスタとかがすごいその自慢合戦にこうなってきて」と話してた。
そこで若い人に広がったのが、BeReal。盛らない「素」を見せるSNS、って触れこみ。
でも、番組が説明したルールは、こう。
通知は1日1回。いつ来るかわからない。
来たら、2分以内に撮って投稿。間に合わないと、投稿の回数に制限。
自分が投稿しないと、友だちの投稿は見られない。
2分以内に出せば、その日に投稿できる枠が増える。
「素」を見せるアプリにも、ちゃんと縛りとごほうびが設計されてる。
本当にビーリアルは素をみせたいじゃなくてつくった素をみせる場所
— YouTube コメント(高評価 544)/ABEMA Primeのコメント欄
ドラマのコンサルの「自然体で。本物っぽい仕草がカギ」と、まったく同じだ。
もうひとつ、日本の国の機関の資料。
国民生活センターが2026年9月に出した注意喚起だ。
AI講座やSNS運用講座みたいな「ビジネス講座」の相談は、2020年度の1,169件から、2025年度は3,551件に増えた。
先に正直に書いとく。この手の相談は、女性のほうが多い(6割超)。
男だけが狙われてる話じゃない。
そのうえで、載ってた20代男性の例。
SNSでAIの副業の広告を見て、1万円の教材を買った。そしたら、上のプランをすすめられた。
「現状や悩み、不満などを聞かれ、「現状を変えるにはスキルを磨く必要がある。お金を稼ぐためにはAIの利用が適切だ。講座代は1、2カ月ですぐに取り戻せる」などと案内された。」
— 国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意」(2026年9月16日)の相談事例
契約は、約80万円。36回払い。
比べて生まれた不満が、そのまま営業トークの入口になってる。
ここでちょうど半分。比べて落ちた夜、親指が次に向かう先がある。第1章で書いた、あの画面もそう。そっちの夜を断つための教材も、当サイトで紹介してる。
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第四幕 直し方、知ってた

ここからが、この章の本番。
会社は、比較が害になるって知ってた。
それだけじゃない。
直し方まで、知ってた。
ここから先の社内文書は、アメリカの州が裁判所に出した訴状に引かれたもの。
Metaは「都合のいい部分だけ切り取ってる」と反論してる。そこは先に書いとく。
2020年、Instagramは社内で、ある実験をした。
名前は「Project Daisy(プロジェクト・デイジー)」。
中身はシンプル。いいねの数を、隠す。
結果。
いいねの数を隠すと、ネガティブな比較が減った。
10代の「いいねでの比べっこ」も、統計ではっきり減った。
社内の研究者たちは「いいねの数を見ることと社会的比較のあいだに、因果のつながりがあると自信を持っている」とまで書いた。
「デイジーは、製品の工夫で、使っているほぼ全員の幸福を上げられる、めったにないケースだ。」
— Meta の社内文書(米国の州司法長官による訴状より)
じゃあ、全員に入れた?
入れなかった。
利用と売上への影響をみつもって、最初から隠す設定にはしないと決めた。
そのみつもりの中には、広告の売上が約1%下がる、って数字があった。
みんなの幸福と、
広告の1%。
フェアに書くと、社内には「一部の人には効いて、ほかの人には効果がなかった」って記録もある。
それでも社内の言葉は、「ほぼ全員の幸福を上げられる、めったにないケース」だった。
かわりに会社は、2021年、いいねを隠すかどうかを「選べる」ようにした。
モセリは2019年のテレビの取材で、こう言ってた。
「Instagramを、プレッシャーの少ない場所にしたい。競争っぽさを減らしたい」。
で、選べるようにした結果。社内の文書には、こうある。
自分で「隠す」を選んだ人は、0.72%。
最初から隠してあった場合は、35%がそのまま隠してた。
0.72%と、35%。
これが、「最初の設定」の力。
人は、最初の設定をほとんど変えない。
だから、最初の設定を決める人が、ほぼぜんぶを決めてる。
社内のチャットでは、「選べるだけ」の仕組みを、こうたとえた人がいた。
「机の上にジャンクフードを置いて、“食べるかどうかは自由。ジャンクフードは体に悪いよ”って札を立てるようなもの」
「選べるようにしました」は、最初の設定を変えないための言いかえだった。
SNSの時間を減らすって誓った。でも正直、ほとんど変わってない。マジで依存。
— YouTube コメント(高評価 387)/92NYのコメント欄
変わらないのは、あなたの意志のせいだけじゃない。
最初の設定を、向こうが握ってるから。
2021年4月、Instagramの公共政策の責任者は、社内でこう書いてる。
専門家からは「10代には最初からデイジーをオンに」って助言をもらい続けてる、と。
同じ年の7月。モセリはその提案を「すぐに」却下した。
理由は、「“いいねは若い人に悪い”っていう世間の見方を、認めることになるから」。
効くとわかってた。それでも、最初の設定は変えなかった。
もうひとつ。
カメラのフィルターに、整形手術をしたみたいに顔を変えるものがあった。
社内は、世界の専門家21人に意見を聞いた。
まとめは、「こういう極端な整形風のエフェクトは、使う人にも、その画像を見る人にも、深刻な影響を与えうる」。
禁止を続けると、会社の成長にマイナス、ってメモもついてた。
最後に決めたのは、マーク・ザッカーバーグ。
禁止の案を、却下した。
理由は「パターナリスティック」。つまり、「お節介」。
当時の製品デザインの副社長は、こう書いて残した。
「あなたの判断は尊重するし、従います。でも記録として言わせてほしい。リスクを考えると、正しい判断だとは思いません。……何年かあとに振り返ったとき、ここで下した決断をよかったと思えることを、ただ願っています。」
— マーガレット・グールド・スチュワート(当時の Facebook 製品デザイン担当副社長)の社内メール(米国の州司法長官による訴状より)
何年かあと、は、わりとすぐ来た。
ホーゲンは、議会でこうも言ってる。
「会社の経営陣は、FacebookとInstagramをもっと安全にする方法を知っている」
「でも、必要な変更をしようとしない。人よりも、とてつもない利益を優先したからだ」
比較が害になると、測ってた。
直し方も、自分たちの実験でわかってた。
直しても困らないことも、怒りの絵文字で1回たしかめてた。
それでも、最初の設定は変えなかった。
知らなかったんじゃない。
知ってて、選んだ。
ここで胸が重くなった人へ。比べて落ちる夜を、ひとりで抱えこむ前に。男としての土台から組み直したい人のための教材がある。続きを読む前に、のぞいておくのもアリ。
第五幕 裁かれた。でも、あなたは対象外

ここまで読んで、「やっぱSNSが心を壊すんだ」って思ったかもしれない。
そこは、盛らずに書く。
学者のあいだでも、意見はガチで割れてる。
2019年、オックスフォードの研究者たちが、35万人以上の10代のデータで調べた。
画面を使う時間と、幸福の関係は、マイナス。でも小さい。幸福のばらつきのうち、説明できるのは最大0.4%。
論文には、こんな比べ方まで書いてある。
ジャガイモをよく食べることと、ほぼ同じくらいの小ささ。
ハイトの本にも、反論が出た。
心理学者のキャンディス・オジャーズは、科学誌Natureでこう書いてる。
「SNSについては、2つのことが別々に、どちらも本当でありうる。1つは、これらのプラットフォームを使うことが……心の病の流行を引き起こしている、という証拠はないこと。もう1つは、若い人がそこで過ごす時間の長さを考えれば、プラットフォームの大幅な改革が必要だということ。」
— キャンディス・オジャーズ(心理学者)、Nature(2024年)
反対側の学者も、「設計は直すべき」ってところでは一致してる。
人を責めない。仕組みを責める。この章の立ち位置は、そこにある。
2026年。アメリカで、SNSの「設計」が裁判にかけられた。
3月、ロサンゼルスの陪審は、MetaとYouTubeに「過失があった」と認めた。
賠償は、あわせて600万ドル。
法廷にはザッカーバーグ本人も立って、整形フィルターの判断について聞かれた。
6月、裁判官は会社側の「やり直し」の請求を退けて、こう書いた。
「原告がInstagramの設計の特徴によって害を受けたという、相当な証拠があった。……そのプラットフォームにどんな投稿が載っていたかとは関係なく。」
— ロサンゼルス上級裁判所のキャロリン・クール判事(2026年6月・ロイター)
中身じゃない。設計で、害を受けた。
Metaは「控訴で覆ると考えてる」と言ってる。結果は、まだ出てない。
8月26日。
Metaは、29の州との裁判を、和解で終わらせた。払うのは、最大で約180億ドル。
和解の条件に入ったのが、これ。
10代のアカウントは、いいねの数を最初から隠す。
「極端なメイクフィルター」を使えなくする。
10代は、FacebookとInstagramあわせて1日2時間の上限が、最初からオン。外すには親の許可がいる。
2021年に却下された案が、
2026年、
和解の条件になって
戻ってきた。
Metaは、責任は認めてない。そこは正確に書いとく。
でも、「最初から隠す」っていうのは、こういうこと。
0.72%じゃなくて、35%の側に、10代全員を置く。
日本でも、時間で縛る動きは出てる。
愛知県の豊明市は、2025年10月から、条例で「余暇のスマホは1日2時間以内を目安に」とした。市民全員が対象。罰則はない。
市によると、いちばんの目的は、睡眠時間の確保。
自治体ができるのは、時間の目安まで。点数の設計には、手が届かない。
このまま行ったら、どうなる?
和解が守るのは、10代だけ。
30歳のあなたのいいねは、明日も表示されたまま。
探索タブは、明日も、鍛えた男と、何百万ポンドの暮らしと、何百ドルの服を並べる。
比べて落ちる。
落ちた夜は、ゲームのランクに逃げる。
そこでもまた、点数を追う。
不満がたまったところに、「現状を変えたいなら」って広告が来る。
総務省の調査(2024年度)だと、20代の男が平日にネットに使う時間は、平均274.5分。パソコンもふくめて、1日4時間半。
10年続けたら、だいたい2年ぶんになる。
その2年のうち、どれだけが、他人の点数を見てる時間だろう。
しかも、これには気づきにくい。
酒には、二日酔いがある。スマホには、ない。
まわりも全員、同じ画面を見てる。比べる相手が全員同じ状態なら、それがおかしいって気づけない。
いつも比べてるのに、そこだけは比べられない。
このまま行ったら。
40歳になっても、あなたは、見たこともない男の腹筋と年収と顔で、自分の今日を採点してる。
AIは毎週、あなたの顔に「伸びしろ」をつけてくる。
自分のふつうの日を、他人のいちばんいい日と比べ続ける。
胴元にとって、あなたは一生、最高の客のままだ。
その採点、
一生、終わらない。
それでも、最初の設定は書き換えられる
でも、0.72%と35%の話は、ひっくり返せる。
人は、最初の設定をほとんど変えない。
なら、あなたの最初の設定を、1回だけ自分で書き換えればいい。
1回変えたら、今度は「変えない力」が、あなたの味方になる。
最初の設定を決められるのは、胴元だけじゃない。
戻る側の数字もある。
イギリスのバース大学の実験では、154人をくじで2つに分けて、片方だけSNSを1週間休んでもらった。
休んだほうは、気分のよさが上がって、落ちこみと不安が下がった。
10本の実験をまとめた2025年の分析は、やり方で分けて調べてた。
SNSを「減らす」やり方には、効果が出た。
「完全にやめる」やり方は、効果がはっきりしなかった。
どっちも効き目は小さめで、海外の、しかも女性の多いデータ。日本の男で確かめたものじゃない。
それでも、確かめられてる向きは、やめるじゃなくて、減らすだ。
だから、この先の手順はぜんぶ「減らす」側。
一、自分の「点数」に名前をつける
いいね。フォロワー。ゲームのランク。年収。腹筋。顔の点数。
自分がどの点数で自分を採点してるか、まず名前で呼んでみる。
名前がつくと、それは「自分の価値」じゃなくて、「どこかの会社が決めた物差し」に見えてくる。
二、いいねの数を隠す
Instagramは2021年から、いいねの数を隠す設定を選べる。
会社が「選べるようにしました」で止めた一歩を、自分で踏む。
0.72%の側に、自分から入る。
三、「おすすめ」より、知ってる人
探索タブやおすすめに並ぶのは、会社が選んだ「知らない人の、いちばんいい瞬間」。
知ってる人の投稿だけ見る時間を、わざとつくる。
あなたの友だちの、ふつうの日がそこにある。
四、時間と場所で、先に縛る
スタンフォード大の依存症の精神科医アンナ・レンブキは、使う前に「物理的な壁と、頭の中の壁」を置いておくやり方をすすめてる。
科学系のYouTubeチャンネルAsapSCIENCEは、その具体例をこう並べてた。
夜9時になったら、スマホは引き出しへ。
目覚ましは、スマホじゃない時計で。
画面を白黒にする。SNSはパソコンでだけ見る。
厚生労働省の睡眠ガイドにも、こう書いてある。
「寝室にはスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝ることが良い睡眠に寄与します」
豊明市の「1日2時間」も、目安としては悪くない。
ゲームなら、始める前に終わりの時間を決める。
で、その時間に止められるか、1回だけ試してみる。
止められたら、問題ない。そのまま楽しめばいい。
止められなかったら、それは意志が弱いんじゃない。壁を先に置いたほうがいい、っていうサイン。
ドイツの実験では、ゲームを2週間休んだ人たちは、のめりこみも、毎日のストレスも、不安も下がって、3か月後もそのままだった。
五、点数のつかない場所を、ひとつ持つ
ポッドキャスターで神経科学者のアンドリュー・ヒューバーマンは、自宅のジムにスマホを持ちこまないことにしてる、と話してた。
筋トレは、ほんとは点数のつかない時間だ。
鏡に映すのは、他人の腹筋じゃなくて、先週の自分。
六、歩く
ヒューバーマンには、もうひとつ話がある。
家の外は、少し歩くと電波が入らない。だから犬の散歩は、ずっとスマホなし。
最初は、たいくつすぎた。
それがいまでは、一日でいちばん好きな時間になった、って。
この動画を見たあと、スマホを家に置いて、20分外を歩いた。スマホでYouTubeを5時間見るより、その20分のほうがマジで楽しかった。
— YouTube コメント(高評価 419)/AsapSCIENCEのコメント欄
点数のつかない道を、足で行く。
フェアにいくために、こういう声も置いとく。
現実的に、社会の一員でいながらスマホを使わないのはムリ。とはいえ、SNSアプリの作られ方は……確実に私たちを壊してる。
— YouTube コメント(高評価 91)/AsapSCIENCEのコメント欄
そう。スマホを捨てろって話じゃない。
道具そのものは、悪じゃない。
問題は、あなたが比べて落ちるほど、儲かる人がいること。
終幕 きつい靴を脱ぐ

ドラマの後半。
点数が落ちて、借りられる車もなくなったレイシーは、ヒッチハイクで結婚式に向かう。
拾ってくれたのは、トラック運転手のスーザン。点数は1.4。
スーザンは、昔は4.6だったって言う。
点数のために生きてた、って。
夫が重い病気になったとき、受けたかった治療の枠は、点数が少し上の人に回された。
夫を亡くしたあと、スーザンは思ったことを、思ったときに言うようにした。
点数は、びっくりするくらい速く落ちた。
正直さが苦手な友だちは、離れていった。
でも、マジで最高だった。……きつい靴を脱いだみたいだった。
— ドラマ『ブラック・ミラー』「ランク社会」(2016年)の字幕より、スーザンの台詞
レイシーは、すぐには乗れない。
「わたしなんて、まだ失うほどのものも持ってない」
じゃあなにが欲しいの、と聞かれて、こう答える。
「まあ、自分は大丈夫か、ってまわりを見て思えるくらい。ふーって、息を吐けるくらい」
彼女が欲しかったのは、4.5じゃなかった。息を吐ける場所だった。
けっきょくレイシーは、結婚式のスピーチでぜんぶ、ぶちまけて、点数は1点を切る。
牢屋に入れられて、目に入ってた採点のレンズも外される。
向かいの牢屋には、知らない男。
ふたりは、思ったことをそのまま言い合いはじめる。
ひどい悪口だ。ひげ、オーラ、頭の形まで。
で、ふたりとも、笑ってる。
採点の目がない場所で、レイシーは、この話でいちばん楽しそうだった。
脚本を書いたひとり、マイケル・シュアは、放送のころにこう話してた。
「だれの人生のどの部分も、いつも他人の人生と比べて測られてる」
「もう、片方の性だけの体型の問題じゃない。両方の性の、見た目の問題になった」
100年近く前、イギリスの哲学者バートランド・ラッセルが、『幸福論』(1930年)に書いた話がある。
自分の暮らしに足りるだけの給料をもらってる。満足していいはずだ。
でも、自分よりべつにえらくもないだれかが、倍もらってると聞く。
その瞬間、手もとにあるものの喜びは、くすんでいく。
で、こう続ける。
倍の給料をもらっている男は、きっと、そのさらに倍をもらっているだれかのことを思って苦しんでいる。そうやって、きりがない。栄光を望むなら、ナポレオンを妬むこともあるだろう。だがナポレオンはカエサルを妬み、カエサルはアレクサンドロスを妬み、アレクサンドロスはおそらく、実在すらしなかったヘラクレスを妬んだ。
— バートランド・ラッセル『幸福論』(1930年)
探索タブのいちばん上には、いつも、あなたより上のだれかがいる。
そのだれかの上にも、だれかがいる。
てっぺんにいるのは、加工された、実在しないヘラクレス。
比べっこに、ゴールはない。ゴールがないから、胴元は儲かる。
ラッセルは、その先にこう書いてる。
妬みからは、成功だけでは抜け出せない。歴史や伝説には、いつも自分より成功した人がいるから。
抜け出す道は、来た楽しみを味わうこと。やるべき仕事をやること。
そして、自分より恵まれてると(たぶんかんちがいで)思いこんでる相手と、比べないこと。
その星は、
あなたの値段じゃない。
ラッセルの答えは、「比べない」。
正しい。スーザンも、そうやって靴を脱いだ。
でも、正直に言う。
比べるなって言われて、やめられたら苦労しない。
なら、もう割り切るしかない。
中途半端に比べるから、落ちる。
どうしても比べたいなら、比べるのがバカらしくなるくらい、圧倒的な存在になるしかない。
ただし、土俵は選ぶ。
顔の点数。いいねの数。フォロワー。
そこは胴元が作った物差しで、てっぺんには、加工されたヘラクレスがいる。
胴元の物差しの上では、勝てないように組まれてる。
画面の外の土俵なら、話がちがう。
自分から誘えるか。2回目につながるか。体。仕事。覇気。
そこにいるのは、加工のない、生身の相手だけだ。
積み上げた分が、そのまま自分の側に残る。
比べるなら、
画面の外で、
圧倒的に。
そのための教材として、当サイトで紹介してるのが「断射塾 Majestic Academy」。
断つことを入口に、恋愛と、男としての土台ごと、半年かけて組み直す。
当サイトの紹介ページで、中身と向き不向きを確かめられる。
今夜、SNSを消さなくてもいい。
アカウントを消さなくてもいい。
ただ、レイシーが牢屋に入って、やっと手に入れたもの。
それなら、牢屋に入らなくても手に入る。
スマホを家に置いて、近所を一周する。
だれも、あなたに星をつけない。
あなたも、だれにも星をつけない。
点数のない道で、やっと、息が吐ける。
4つの章の胴元は、
同じ原料を使っていた。
扉は、ずっと開いている。
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この章の出典(タップで開く)
- ドラマ『ブラック・ミラー』「ランク社会」の字幕の書き起こし(非公式)
- 脚本家マイケル・シュアとラシダ・ジョーンズの取材(TIME 2016年10月20日)
- Instagram 社内資料「Teen Mental Health Deep Dive」(Meta 公開・注釈付き)
- Meta の反論(2021年9月)
- Instagram 社内調査「Teen Girls Body Image and Social Comparison」(WSJ 公開)
- Facebook の点数表(WSJ の記事・米下院の公聴会資料に再録)
- 怒りの絵文字の重み(Washington Post の記事・Anchorage Daily News の転載)
- フランシス・ホーゲンの上院証言(公式記録)
- リア・パールマンとエイザ・ラスキン(BBC 2018年7月3日)
- 州司法長官による対 Meta 訴訟の訴状(黒塗りを減らした版)
- モセリ「競争っぽさを減らしたい」(NBC News 2019年10月2日)
- いいねを隠す設定を選べるように(Fortune 2021年4月15日)
- ロサンゼルスの陪審評決(CNBC 2026年3月25日)
- ザッカーバーグの証言(NPR 2026年2月18日)
- 再審請求の棄却(ロイターの転載・Insurance Journal)
- 29州との和解(NBC News 2026年8月26日)
- 同(CNBC 2026年8月26日)
- Tiggemann & Anderberg(2020)男性と Instagram の筋肉の画像
- Yee ほか(2020)男性の 7 日間の実験
- Ganson ほか(2025)筋肉系の投稿と筋肉醜形
- こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」
- Centre for Young Lives『Don’t Blame Life, Blame Your Face』(2026年6月)
- 顔採点アプリの調査(The Conversation 2026年3月9日)
- Umax の App Store の掲載ページ(2026年11月4日に確認)
- 「改善の余地を残すため」(ABC News 2026年10月11日)
- 「ルックスマックスには幅がある」(BBC 2026年3月15日)
- 米国矯正歯科学会の警告(2024年)
- 国民生活センター「増加する美容医療サービスのトラブル」(2023年8月30日)
- 国民生活センター「男性の美容医療トラブルも増加!」(2026年1月20日)
- 国民生活センター「男性も増加!脱毛エステのトラブル」(2022年7月21日)
- ジョナサン・ハイト「Why I'm Increasingly Worried About Boys, Too」(After Babel 2023年)
- 『The Anxious Generation』の章ごとの補遺(著者の公式)
- キャンディス・オジャーズの書評(Nature 2024年)
- Orben & Przybylski(2019)画面時間と 10 代の幸福
- 久里浜医療センター「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関する実態調査」(2026年)
- 久里浜医療センターの 2019 年の全国調査(中央調査報 No.109)
- WHO「Addictive behaviours: Gaming disorder」
- Brailovskaia ほか(2022)ゲームを 2 週間休む実験
- 総務省「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(2025年6月)
- Lambert ほか(2022)SNS を 1 週間休む実験(バース大学)
- May ほか(2025)SNS を減らす実験のメタ分析
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- 国民生活センター「ビジネス講座のトラブルにご注意」(2026年9月16日)
- 豊明市「スマートフォン等の適正使用の推進に関する条例」
- バートランド・ラッセル『The Conquest of Happiness』(1930年・Project Gutenberg)
